今年度の大学史研究セミナーは、新型コロナ感染症の状況に鑑み、昨年度同様オンラインにて開催いたします (対面の可能性もありオンライン方式に確定しました) 。
今年の大学史研究セミナーでは「表現する学生」をテーマとしてシンポジウムを開催する。大学史研究において、学生の活動は、それが正課であれ正課外であれ、扱いが難しいものの一つであると考えられる。最大の要因は、日常的な学生生活の実態は、記録として残されるものが少ないという史料的な制約にある。しかしながら、大学を構成する要素として、学生の活動は大学史研究の中で本来中心的に扱われなければならないテーマの一つである。
斉藤利彦編『学校文化の史的探究:中等諸学校の『校友会雑誌』を手がかりとして』(東京大学出版会、2015年)は、中等諸学校の生徒の活動を対象とする研究書であるが、ここに示された視点はおおむね高等教育機関に所属する学生の活動を分析する際にも有効であると考えられる。学生の活動(主に課外活動を指す)は、教員の指導の下に行われるという側面と学生が自主的・自生的に作り上げるという側面があること、担い手相互(教員と学生、教員間、学生間、時には卒業生も)の対立や葛藤の中で作り上げられること、社会から影響を受けると同時に社会へ影響を与えること、等々である。
シンポジウムでは、精神病学の教授であり、かつバイオリン演奏も活発に行っていた榊保三郎が設立した九大フィルの活動について、九大フィル100年史の編纂に関わられた松村晶氏(久留米工業高等専門学校長)に、東京帝国大学セツルメントの活動、中でも託児部の活動について、幼児教育学・保育史の福元真由美氏(青山学院大学教授)に事例報告をしていただく。また、本会からは山本珠美が講演部・弁論部や県人会による学生巡回講演の実態について報告し、その後、学生活動をいかに読み解き、大学史研究に位置付けるかについて全体討議をする。
日 時:2022年12月4日(日) 9:00〜12:40
セミナー問い合わせ先: