第33回大学史研研究セミナーの開催について
また、シンポジウムのテーマを募集しています。ご提案をお持ちの会員の方は以下のセミナー担当までご連絡下さい。 キャンパスプラザ京都 交通アクセス 〈事務局セミナー担当〉 広島大学高等教育研究開発センター 福留東土 TEL&FAX:082-424-6231 |
第32回大学史研究セミナー報告
今回のセミナーは、全体の運営とシンポジウムの企画について羽田貴史会員、会場の提供と設営、史料館見学について永田英明会員のお二人に全面的にお世話いただいた。2日間で31名の参加者があった(会員19名、非会員12名)。 |
一日目のシンポジウムは羽田会員の企画と田中正弘会員(島根大学)の司会により、「学問の自由と大学自治―ドイツ・アメリカ・日本―」が行われた。登壇者は、ドイツについて京都大学の金子勉氏、アメリカについて東京女子大学の黒川修司氏、そして日本については羽田会員から報告が行われた。 金子氏は、「19世紀のドイツにおける大学の自由と自治」と題し、ベルリン大学を創設したフンボルトと、『独逸国大学制度論』が日本でも翻訳・紹介されたロエスレルに着目して、ドイツにおいて当時、大学の自治やそこにおける学問・研究の自由が、大学制度の構築の過程でどのような理念として論じられていたのかを一次史料に基づいて丹念に解説された。 黒川氏は、「米国における学問の自由を巡る動向」と題して、主として第二次世界大戦期以降における赤狩りの実態について詳細に解説しつつ、州政府や理事会、あるいは大学自身によって、いかに教授の身分保障がいかに脅かされていたかについて明らかにされた。この実態は、氏の著書『赤狩り時代の米国大学』(中公新書、1994年)においてより詳しく論じられている。また、最近の米国における学問の自由の動向として、9・11以降に生じつつある新たな危機について紹介され、また学問の自由を擁護する上で重要な役割を果たしてきたAAUP(米国大学教授連合)の会員が大幅に減少しており、学問の自由に対する脅威が自覚されていない現状についても言及された。 羽田会員は、「日本における学問の自由と大学の自治」と題し、戦前期における学問の自由と大学自治に関して当時の知識人らによってどのような言論が展開されたのかを論じた後、戦後大学改革の中で大学管理制度を巡って、CI&Eと日本側との議論を中心に当時どのような議論のプロセスがあったのかを、理事会方式による大学管理を巡る議論、地方分権、レッドパージと大学管理の関係などについて詳細にわたって論じられた。 いずれの報告も内容が濃く、また興味深い論点を含んでおり、報告後の討論も活発に行われ、所定の時間の中では議論し尽くせない点も多く残った。3つの報告は、議論の内容にしても報告のスタイルにしても、また「学問の自由」と「大学の自治」という2つのテーマのどちらに軸足を置くのかについても三者三様であった。だが、それぞれの独自の視点とスタイルに依拠して展開された今回のシンポジウムは、このテーマの広がりと魅力を知る上できわめて有意義なものであり、様々な想像力をかき立てられる内容であった。「学問の自由」と「大学の自治」は、それぞれを独立に論じることも可能である。しかし、それぞれの問題を突き詰めていけば両者の接点に行き当たることを3つの報告は教えてくれていたと思う。終了後の懇親会、さらにはセミナー終了後も、今回のテーマは今後、より深く考察する余地を含んだものであるとの意見が寄せられた。近い将来のセミナーにおいてぜひ検討してみたい。 |
前夜の懇親会を経た2日目には、井上美香子会員(九州大学)の司会により2つの自由研究発表が行われた。西九州大学の香川せつ子会員は、「イギリスにおける女性のアカデミック・プロフェッション:1880〜1930」と題して発表された。現在、女性研究者の増加とそのための支援が国際的な課題となっており、とりわけ日本では女性研究者の割合が先進国の中で最低レベルにあるという問題意識を基底に、イギリスにおいて女性教員の比率の上昇が見られた19世紀後半から20世紀前半の時期を対象に、女性カレッジや共学大学において、どのように女性が採用され、またキャリアを形成していったのかについて詳細に論じられた。 続いて、広島女学院大学の松浦正博会員は、「中世パリ大学神学部と托鉢修道会をめぐって」と題して発表された。中世大学の組織化を語る上で托鉢修道会が重要な役割を果たしたという近年の研究成果をベースに、特にドミニコ会を取り上げて、当時どのような組織構造の下に知的活動が展開され、またパリ大学との間でどのような影響関係を有していたのか、さらに相互の相違点は何かについて論じられた。 自由研究発表終了後、永田会員の案内で、史料館ツアーを行った。20名ほどの参加者があった。史料館の展示室では常設展示として「歴史のなかの東北大学」が公開されており、一次史料や写真をはじめとする各種の展示物や丁寧な解説文を通して東北大学の歴史が分かりやすく理解できるよう配慮されていた。また、大学文書館や史料館勤務以外の会員にとっては、日頃なかなか目にすることのない貴重な史料をご紹介いただき、参加者の関心を惹いていた。参加者全員で記念撮影をするなどして散会となった。 このように、非常に充実したプログラムを編成することが出来たのは、ひとえに羽田会員、永田会員のご尽力のおかげである。また、金子氏と黒川氏はお忙しい中、快くご報告をお引き受けいただき、有意義な内容をご提供いただいた。この場を借りて、改めて深く感謝申し上げたい。 |
(事務局セミナー担当 福留東土) |
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